第11章 旅禍
次々に入る情報を元に隊士の救護に走り回っていた。
そんな時に信じられない情報が飛び込んでくる。
「斑目三席がやられました。あちらに倒れてます。瑞原さん、見てください。」
一角さんが!?
十三隊の中でも戦闘能力に長けた十一番隊の三番に位置するのに、旅禍の実力に冷や汗が出る。
「一角さんっ!!」
現場に駆けつけて見ればかなりの出血だ。
しかし、傷口に血止め薬が塗られている。
助かった……
これがなければ今頃一角さんは死んでいた……
ホッとして崩れ落ちるように一角さんの隣に跪く。
「おう、格好悪ぃとこ見られたな。」
仰向けに横たわったままニヤリと笑う。
強い瞳がこれくらい大丈夫だと安心させてくれる。
覚悟はしていても、実際に誰かが死ぬかもしれないとなるとこんなにも違うのか。
うろたえてしまった自分が情けなくなる。
「すぐに応急処置だけします。」
翠光の光の膜が二人を包み込む。
一角さんの手を取り握る。
「敗けて永らえるなんてな……」
自嘲する一角さんの手を更に強く握る。
「生きてて、よかったです……本当に……」
溢れる涙を一角さんがもう一方の手で拭う。
「戦いの中で死ぬのが本望だ。あの時死ぬと思った。これでいいと。でもな、一瞬優姫の顔が浮かんだ。お前にまだ言ってない。俺の気持ちを伝えてないと思ったら、少し死ぬのが惜しくなった。」
頬を拭っていた手が頭に回されてそのまま引き寄せられる。
唇に柔らかな感触と少しの血の味。
優しい口づけが離されると、目の前に真剣な一角さんの顔。
「お前が好きだ。」
吸い込まれそうな強い眼差しにドキドキと心臓が騒ぎ出す。