第11章 旅禍
そしてそれぞれの場所で闘いが始まろうとしている。
「優姫ちゃんは俺らが守ってやるから。安心してな。」
近くにいた十一番隊の隊士がにやけた顔で声をかけてくる。
定期的に十一番隊に出入りして剣術の訓練に参加している優姫とは顔馴染みの隊士が多い。
今の優姫にはこの隊士だったら剣術でも勝てるくらいの実力もついているが、顔には出さずに笑顔で応える。
死人が出なければいいのだけれど……
そう思うのは自分が甘いからか、戦いになれば死もありうるのが死神となった自分達の使命だ。
カチャリ……
知らず、腰に差した斬魄刀に手をかけていた。
優姫も十一番隊の隊士の列に入って捜索にあたる。
離れたところで激しい剣撃の音が始まる。
誰かが応戦してる。
「あっちだ、急ぐぞ!!」
殺気立った隊士達が走り出す。
優姫も遅れないように走りだし、最初の現場に着く。
既に旅禍の姿はなく、十一番隊の隊士達が倒れている。
すぐに卯ノ花に連絡をとる。
「四番隊の瑞原です。十一番隊守護範囲で怪我人多数。応援お願いします。」
一時捜索の列から外れて救護にあたる。
重症の者から手当てを始めなければ。
比較的軽傷の者の手を借りて動けない隊士を集めた所で斬魄刀を抜く。
「清めよ、翠光!」
優姫を中心に淡い翠の光の球体が広がり、隊士を包み込む。
数分後、光が消える。
重症をおって息も絶え絶えだった隊士達が穏やかな呼吸を繰り返している。
「うおっ!すげぇ……」
そばで見ていた十一番隊の軽傷の隊士が目を剥く。
「応急的な処置だけです。とにかく危険な状態の方から処置します!」