第11章 旅禍
「優姫に気を使わせるとは、私もまだまだということか……」
「なんとなく来てみただけですから。」
「そうか……」
ゆっくりと目を開ける白夜様。
重ねた手をおろし、掌を見つめる。
「大切なものは全てこぼれていく。」
掴めないものを掴むように手を握る。
眉間に刻まれた皺が苦悩を物語る。
白夜様はもう一度強く目を閉じた。
ゆっくりと開けた目にもう悲しみはなかった。
覚悟を決めた強い光が宿っていた。
「もう、大丈夫だ。優姫ももう休め。今夜はもう遅いからうちの隊舎に泊まっていけ。」
異議を唱えさせない言い方。
でも目元が優しい……
大丈夫、この方は崩れない。
自分に言い聞かせるように胸の中で呟いた。
数日間は厳戒体制がひかれていた。
四番隊も補給の為の薬剤などの準備で大忙しだった。
このまま、何もなければいいのだけれど……
今日は卯ノ花隊長と虎徹副隊長が一番隊舎に召集された。
出掛け際に卯ノ花隊長が多分旅禍と市丸隊長の件でしょうと言っていた……
市丸隊長、大丈夫かな。
やっぱり取り逃がしたことは問題だったんだ。
でも、あのときの市丸隊長は何か考えがあってそうしたみたいだったけど……
市丸隊長を心配しながら今日の雑務に没頭していたとき、激しい警鐘が響いた。
「緊急警報!!緊急警報!!瀞霊廷内に侵入者あり!!各隊守護配置について下さい!!」
瞬時に慌ただしくなる隊舎内。
優姫も自分の斬魄刀を掴み飛び出す。
四番隊は他の隊の補給が主な役割だから、あまり役に立てないかもしれないけど……
隊舎の入口で担当の部署を確認して配置に向かった。