第11章 旅禍
そのルキアさんが罪人が懺罪宮に移ってしまって会えなくなってしまったので、花太郎さんは落ち込んでいるようだった。
「残念ですね。極刑も……」
「うん、こんなこと言ったら罪になるのかもしれないけど、助けてあげたいよ。」
寂しそうな花太郎さんと二人、暫く食堂で無言で過ごした。
深夜、月が輝くなか歩いて六番隊舎にやって来た。
なんとなく予感がしただけだから、無駄足になっちゃうかもとは思いつつ足を牢へ向けた。
扉の影からそっと中を覗く。
いた……
牢の中で佇み、何かを堪えるように目を瞑る美しい人。
邪魔をしないようにそのまま動かずに見守る。
もうそこにいない人を思って何を考えているんだろう……
その胸の悲しみはもうすぐ、刑が執行されれば消えない痛みになってしまう。
この人はわかっていてその痛みを甘んじて受けるのかな……
誰にも苦しむ顔を見せずに……
私にそんな顔を見られたくないかもしれない。
そっと立ち去ろうと後ろを向く。
「帰るのか……」
後ろから静かに声をかけられる。
この人がこんなに近くにいて気づかないわけはないか。
「はい。お邪魔しました。っ!」
振り返れば悲しみに揺れる瞳がこっちを見ていた。
呼吸が止まる。
惹き寄せられるように近づいて両手て頬を包む。
目を閉じて、私の手の上から重なる大きな手。
「なぜ来た?」
目を閉じたまま訊ねられる。
「今日ルキアさんが懺罪宮に移ったときいて、白夜様がここにいる気がして……」