第11章 旅禍
素直に謝るととたんに目元が優しくなる。
普段は見せない、二人だけの時に見せる目。
「危険な事はせんとってや。ボクが側におって守ってたいんやけどいつもそうはいかんし、自分から危険なとこにノコノコ来たらあかんよ。」
深いため息と共にコツンと頭を小突かれる。
「心配、してくれてありがとございます。」
孤児だった私を心配してくれる人はいなかった。
誰かが心配してくれるって、嬉しくて、くすぐったいような気持ち……
鼻の奥がツンとする。
私の顔を見て気づいたのだろうか。
隠してるつもりなのに、やっぱり市丸隊長には解ってしまう、私の気持ち。
頭をそっと胸に抱き寄せて、甘えていいんだと無言で伝えてくる。
服の胸元を掴んでそのまま暫く涙が出ないように目を閉じる。
髪を梳くように撫でる手が、大丈夫だよと言われてるみたい。
お兄ちゃんがいたらきっとこんな感じ……
「ボクが守ったるから、心配せんでええ。」
どこか決意の響きを滲ませて市丸隊長が呟く。
どういう意味かと振り仰ぐと何でもないと言うように、小さく首を振る。
「とにかく、おとなしくええ子にしててや。」
優しく頭を撫でながら、少し困ったように笑った。
「旅禍と遊んだことがバレたら怒られるやろな、優姫ちゃんが癒してや……」
肩に頭を乗せて甘えるようにグリグリと擦り付けられる。
珍しいな、いつもは意地悪とセットでかまって欲しいとちょっかいをかけてくるのに……
というか、あれ?
「取り逃がしたんですか?どうして?」
ビックリして問いかけても、市丸隊長はニコニコと笑うだけで教えてくれなかった。