第11章 旅禍
西門のすぐ側まで来たとき、大きな音が響いた。
門が開けられてる?
遠目にもわかる巨大な門を掲げる巨体。
西の門番兕丹坊……
三百年負けなしという巨体の戦士が門を開けている。
まさかと言う思いで走り出す。
その間に激突する音と大きな霊圧を感じた。
何が起きているの?
上がる血飛沫と兕丹坊の腕が一本落ちていくのが見えた。
優姫が到着するのと同時に門がズシンと落ちた。
門の下には夥しい血溜まりがあった。
砂ぼこりと鉄の匂い……
門の前にいる人影には見覚えがあった。
「市丸隊長?」
背の高い後ろ姿が振り返った瞬間には既に抱きかかえられて移動していた。
「どうしたんや?こんな所まで。あぶないし、四番隊さんは来たらあかんよ。」
いつもの張り付けた笑顔。
私も少し前まではこうして笑っていた……
私とよく似て気持ちを圧し殺して生きてきた人。
私に初めて泣き場所を与えてくれた人。
意地悪だけど、優しい人……
建ち並ぶ隊舎の屋根を蹴って飛びながら移動して、三番隊舎の屋根まできた。
屋根の上の比較的足場の良い所にそっと立たされる。
「それで?なんであんなとこにいたん?」
目が怒ってる……
けど、心配してくれてるのは伝わってくる。
「ちょっと、旅禍が気になって、状況確認に……」
口ごもりながら答えると、さっきより鋭くなる眼光!
本気で怒ってる!!
「気になった……そんなんで要請も無いのに四番隊さんが前線にきたらあかんよ。まさか死にたい言うんやったら許さへんし。」
睨まれて、グイッと強い力で顎を取られる。
「ご、ごめんなさい……」