第10章 愛を請う
私を見上げる朽木隊長の瞳が揺れる。
「今、優姫の前にいるのは貴族の朽木白夜ではない。」
「え?」
静かな声が響く。
「護廷十三隊の六番隊隊長の朽木白夜ではない。」
真剣な表情から目が逸らせない。
やっぱりこの方は美しい……
「一人の只の男の朽木白夜だ。只の男の私が、愛する女性に愛を請うているのだ。跪くことも、足に口づけることも厭わない。優姫、お前を愛している。今夜は私と過ごしてくれないか?」
揺れる瞳の中に朽木隊長の苦しみが覗く。
悲しみが滲む。
この方が初めて見せる弱さ。
影柘榴の言葉が甦る。
『誰でもそうだよ。強いばかりじゃない。必ず弱さも持っている。その弱さゆえに苦しんでる。』
今、私はこの方の弱さを包み、支えられるのだろうか。
私なんかでいいのだろうか?
「私でいいのですか?私は……朽木隊長の気持ちに応えることができるか……」
「私を一人にしたくないと、私を支えたいと、私の為だけにこうして走ってきてくれただろう?」
微かに笑ったのか、細めた瞳が優しい。
「優姫の献身的な気持ちに付け込むのは卑怯だと思うが、今夜はどうしてもお前を愛したい。離したくないんだ。嫌でなければ側にいてくれ。」
この方の弱さを見せられて、求められてしまったら逃げられない。
惹かれる心のままにゆっくりと頷いた。