第10章 愛を請う
優姫を連れて朽木家の別邸を訪れた。
落ち着いた場所にあり、使用人も少ないこの屋敷はたまの息抜きに利用する朽木白夜専用の別邸だ。
すぐに優姫を部屋に通してやりたかったが、転んだ時についた泥が着物の裾や足袋にもついている。
仕方なくまずは庭に連れていく。
縁側に座らせてお湯を用意させる。
いつも落ち着いて行動している彼女が走って転ぶ姿を想像すると、可笑しくも愛しくなる。
私のために、今この時は私の事だけを思って来てくれたのだな。
使用人が桶にお湯を張ったものを持ってきた。
「後は私がやる。下がっていい。」
使用人を下がらせると彼女の前に跪く。
優姫の足を取ると泥で汚れた足袋を脱がせる。
「っ!!あのっ、自分でやります。」
優姫は慌てたが黙って見つめて制する。
私の目を見て、諦めたのかおとなしくなったところで再度足に目を落とす。
足袋の中の足にも僅かに泥がついている。
お湯に浸けて洗い流してやる。
汚れてはいたが傷は無いようだ。
布で軽く拭って、左足を取る。
同じように洗い流し、傷がないのを確認する。
布でぬぐった後、足の甲に指が触れた。
「んっ……」
優姫の口から甘い吐息が漏れる。