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ジャンルごちゃ混ぜ短編夢小説

第2章 drrr!


悲しみにくれるあなたを愛する(折原臨也)
学校から帰ってきた愛ちゃんに「おかえり」と言おうとした口は、彼女自身によって塞がれていた。
リビングの自称仕事場の椅子に腰かけたまま、愛ちゃんを抱き込みその行為を続ける。求められているのなら、応えなくちゃねえ?
暫くして呼吸と共に愛ちゃんの顔が離れていく。
ぽたり、と。
俺の頬に雫が落ちた。
上を見上げると、ぼろぼろと涙を流す愛ちゃんがいて。俺は優しく微笑みかけながらその涙を拭き取っていく。
「おかえり、愛ちゃん。学校で何かあったの?」
「……ただいま。……うん、ちょっと」
嗚咽を漏らすこともなく静かに泣く愛ちゃんを俺と顔を合わせられる向きで椅子に跨らせる。愛ちゃんは小さく返事をしながら俺の太ももの上に腰を落とした。
「そう。言ってごらん。聞いてあげるよ」
昔から趣味でやっていたから相談事は聞き慣れている。それに、彼女は面白い。今まで俺に縋ってきたどんな娘よりも利己的で自己愛に溢れている。誰かを愛したい彼女は誰にも愛されたくないらしい。だけど愛した人の愛が欲しい。全く、矛盾だらけだ。
「他のクラスで、結構仲の良かった男友達に、告白された」
そういうことか。この子、わりとモテるからなあ。
「……それで、断ったら、お前はどうせ顔だけの存在だ、って」
「……酷いね。それで泣いてるの?」
愛ちゃんのふわふわの髪を撫でながら聞くと、違う、と返答があった。
「自分の性格が悪いのは知ってるからそれは別にいいんだ」
「まあ性格が良かったらそもそも俺のところに来てないだろうねえ」
愛ちゃんは少し黙って、自分の体を抱きしめるように両腕を腰に回した。それを包み込むように俺は愛ちゃんを抱きしめてあげる。
「好きだ、って、言われた途端、そいつの顔が見れなくなったんだ。気持ち悪い、汚い、って、思ってしまって」
この娘は、人に愛されるのを酷く嫌がる。向けられた愛を「汚い」と拒絶することで愛を理解できない自分の心を守っているんだろう。
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