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ジャンルごちゃ混ぜ短編夢小説

第1章 pdl


従兄妹がいます(寒咲通司)
 昨日お兄ちゃんと大喧嘩した。
正確には、従兄妹のお兄ちゃん。お父さんのお兄さんの息子だから姓は同じなんだけど。
 東雲陽。それが彼の名前だ。私より二歳年上で今総北高校の三年生。通司さんと同じクラスで帰宅部。
学校でもそんなに接点はないし、もちろん家も違うから会うっていえば通司さんのクラスに行くときか学校ですれ違うときくらい。でも陽はあまり成績がいい方ではないし、世間でいう不良の枠に入るような人格なので、学校では目も合わせてくれない。それが私の体裁を守るためっていう陽なりの優しさだってことは知ってるから何も言えないんだけど。
喧嘩の原因はまあ平たく言えば陽と同じクラスの通司さん。陽は私が三か月前から通司さんと付き合い始めていたことを知らなかったようで(まあ言ってなかったんだけど)、昨日私が通司さんと手を繋いで帰っていたところを偶然目撃し、家に押しかけてきたのだ。で、そのあと大喧嘩ってわけ。
自慢じゃないけど陽は結構イケメンな方だ。今のボタン全開アクセサリーじゃらじゃらっていう不良ルックでも怖いもの知らずな女子の一部にはわりとモテているんだから、そこらの生徒と同じような着こなし方だと普通に人気が出るだろう。
どうしてこんな話をするかというと、昨日の今日で登校して朝練の後、H.R10分前に教室に来たら、いたからだ。そこら辺にいる男子生徒と同じような普通の格好をした(それでも両耳に一つずつピアスをしているけど)、陽が。私の席を我が物顔で占拠している。
「おはよう、愛ちゃん」
幻覚だろうか。目をこすってみたけど私の席にはやっぱり爽やかな笑みを浮かべてこちらに手を振ってくるイケメンの姿があった。ちなみに陽がこういう顔をするときは本気で怒っているときだ。
同じクラスの女子たちがわらわらと寄ってきて「あのイケメン誰!?」と質問攻めしてくる中をそっと抜け出し、教室の外に出る。後ろでがたりと椅子を引く音がしたなんて、気のせい気のせい。
「愛ちゃァーん?なんで逃げるのかなァー?」
 背後に気配がするなんて、気のせい……。
「現実逃避もほどほどにしろよ、愛」
 必死に耳を塞いでいた両手が誰かに掴まれ、そのまま耳元で囁かれた。呻るような低音で。
「……何しに来たの、陽」
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