第3章 初めての料理
「おやっさんたちと町に補給に行った時に炊き出ししてたおばちゃんがレシピ教えてくれたの。分量も体積を利用してきちんと量ったし、味見もしたよ」
ねえ昭くんと言われて物陰から昭弘が顔を出す。いたのかと誰かが反応する前に相変わらず嫌そうな顔をした。
「この女、すぐに任務だと言い張る」
昭弘の扱いを良くわかっている。笑わぬように努めるオルガたちの横で三日月は首を傾げた。
「昭弘も味見をしたんだ」
ああ、そこは気にするんだな。とは誰も言わぬようにして、二人が味見をしたなら、今まで大したものを食べてはきていないものの味覚そのものは確かなので、大丈夫だろうと一同は席についた。
すぐさま味気のない鉄色の椀に注がれたミルク色の液体が出てくる。それから斜めにカットされたフランスパン。
「おお、肉も大量に入ってんじゃねーか!」
「どうやって手に入れたの?」
鉄華団の財政状況は今もカツカツだ。それでも以前の安いレーションよりはマシだがこれだけの肉を一度に使うのは贅沢だ。
ノルバの歓声に浮上したビスケットの疑問にようやく解放された昭弘は隣にどかりと座り込むとフィアを顎で示した。
「あの女が肉屋で売ったんだ」
「は、何を?」
「機械を修理するからシチュー用の肉をくれと」
「ああ……なるほど、技術を売ったんだね」
ここに来る以前はそうして生活していたと言っていたのは他でもない彼女自身だ。なるほど、と納得したところで配膳が終わったらしいフィアが機嫌良くやってきた。
「どうミカくん?」
「うん、シチューの味がする」
「良かったー具もいっぱい食べてね」
「うん、でももう少し大きいほうがいい」
「そっかー今度は大きめに切るね。2立方センチメートルくらい?」
「わかんないよ」
何とも緩い会話に苦笑しつつ、まあこれはこれでいいか、とオルガたちは温かな食事を楽しむのだった。