第6章 過去の話
「一人でいると思い出しちゃって。バルバトスを見たら今の自分を思い出せるかなって」
「バルバトスで罪ほろぼし、とか?」
「ふふ、そんな大層なものじゃないよ。わたしのせいでみんなが、とか、そんな凄い存在じゃないもの。でもなかったことにしちゃいけないんだと思うし」
そこでフィアはバルバトスの脚に触れるとまるで生き物のように優しく撫でた。
「ここで働くことでわたしやあんな子たちがいなくなるならそれはそれでいいことだと思うけどね。ミカくんも一緒だし」
「お兄ちゃんに似てるから?」
同じく立ち上がった三日月がそれでも見上げるとフィアは首を傾けて考える素振りを見せた。
「うーん、今は似てないところも好きだよ」
「そう」
素っ気なく返事をしたものの、三日月は同じく首を斜めにして足元を爪先で蹴るように擦る。
「今日は一緒に寝てもいいけど」
「ホント!?」
「寝相悪くないなら」
「大丈夫、わたし死んだように寝るらしいから!」
「それはこわいんだけど」
苦笑する三日月に満面の笑みでフィアは飛び付いた。