• テキストサイズ

鉄血のオルフェンズ 三日月夢

第1章 出会い


少女に腕を引かれながら三日月は表通りの人混みをかき分けゆっくりと進んだ。
「あいつらも表立っては騒ぎを起こしたくないはずだから大丈夫」
「ふーん」
「でも君、強いのね!足払いからもう一人倒すの全然見えなかった!」
「別に……」
「お礼させてね。って言っても大したことはできないけど」
不愛想な三日月の対応を気にもせず、言いながらいい匂いのするパン屋の横の路地に入るとすぐのドアを叩いた。
「こんにちはーおじさんいるー?」
「おう、嬢ちゃんか」
ビスケットを思い出させるずんぐりむっくりとした体と立派なヒゲを蓄えた中年の男が年季の入ったエプロンを翻らせる。
「オーブンの調子はどう?」
「お陰様ですこぶるいい調子だ。パンの香りが違うだろう。火力が命だからな!」
「よかった。でも気を付けて!ここの窯をもう一度壊せって言ってくる変な人がいるの!」
すると店主は腕を組んで考え込む。
「まあライバルはいくらでもいるからなぁ……あくどいのもな。こっちは大丈夫だから、お嬢ちゃんも気を付けろよ」
「うん、しばらく顔を出すのはやめるね。でもその前にこの子に分けてもらってもいい?」
ようやく前に出された三日月が店主を見上げると当然誰だと疑問を抱かれる。それに少女が助けてもらったと言えば抱えるほどのパンが出てきた。
「正規品じゃなくて試作やはしたものだが、味は保証するよ!」
「ありがと、おじさん!」
「……ありがとう」
そうして路地に戻るとそれじゃあね!と少女は元気よく表通りに消えていった。
追いかける理由もないので見送った三日月には両腕いっぱいのパンだけが残った。
/ 17ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp