第7章 スキということ。
月島side
「…オレ言ったよね?バレてもいいの??」
体育館を出ると、体育用具倉庫の方からアイツの声がした。
角を利用して、隠れて様子を伺う。
「……ッ」
アイツの向かいには、苦しそうな顔をしためぐみが立っていた。
「…サッカー部のマネージャーになってくれたら、言わないでいてあげるからさ。愛しのケイクンに。」
………は?
「ッ!蛍には絶対に言わないでっ……!」
なんだよ、ソレ?
今更、僕に隠しゴト…?
「…フ〜ン。じゃあさ、オレにキスしてよ?ケイクンには黙っててあげるから。めぐみちゃんがケイクンを好きだって。」
!!!
「……わ、わかり…まし…た。」
次の瞬間……
僕は、先輩の前へと飛び出した。
もちろん、アイツにキスしようと背伸びをしためぐみの唇は、僕の唇と、重なった。
「…っ!!/////」
「……ッ…//」
驚いて目を瞬かせるめぐみを背にして、先輩へと振り返る。
「…あげませんから。/」
思えばアレが、僕のファーストキスだった。
その翌日…
僕はめぐみと山口と3人で、中古のCDや本が販売される大きな地元のイベントへやってきた。
…それから数日が過ぎても、僕らの関係は変わらなかった。
僕はというと、正直めぐみのことをあの一件以来、変に意識してしまうのがイヤで、あと一歩が踏み出せず、
めぐみもめぐみで、【幼馴染み】という関係を大事にしたいみたいで、なにかあると山口を誘って、3人の状況を作っているようにみえた。
いま思えば、それは単なる照れ隠しで、本当は僕があと一歩を踏み出すのを、めぐみは待っていたのかもしれない。
ただひとつ、アレから変わったことと言えば、お互いに【幼馴染み】という言葉を使うことが増えたような気がした。
お互いを囲う特別な言葉を使って、他のヤツらとは違うことを、あの頃の自分たちは、お互い無意識に伝え合っていたのかもしれない。
もう二度とこんなコトのないよう、
めぐみとのコトだけは、あとほんの少しだけ素直になろうと、僕はいま隣にいるめぐみを見て思った。