第2章 母さん、ありがとう
…俺の前には拗ねた松寿丸。
なぜかというと、俺が鍛錬ばかりしていたせいでなかなか会えず、3年ぶりに会いました。はい。
読唇術も鍛錬しながらのものなのでつい昨日完璧にマスターしたのだ。
1年かかったけど有言実行できた俺をほめてくれw
「ごめんな?でも、俺前より強くなった!」
「ふんっ、そうでなければ我が待っていた時間が無駄ではないか」
「待っててくれてありがとうな」
そういって撫でると、でもまだまだ弱い。などと照れ隠しを言う姿がすごく懐かしく可愛く思えた。
「小弥太、これをやろう」
お気に入りの菓子だと渡してきた包みを開けると桜餅がいくつか入っていた。
「ありがとう。じゃあ、一緒に食べようか」と言いお茶を入れに行こうと立ち上がると着物の裾を掴まれた。
「よい、我が入れてきてやろう」
松寿丸が立ち上がって厨に向かう。
なぜ場所がわかるかというとうちに何度も来ているからである。
いくらか経つと湯呑を2つもつ松寿丸が現れた。
俺が湯呑を1つ受け取ると松寿丸はもと居た場所に座った。
少し口に含んで飲み込むとほどよい渋みが口に広がる。
「やっぱり松寿丸の入れたお茶は美味いな」
「当たり前ぞ」
それでも嬉しそうにする松寿丸に微笑む。
桜餅も食べるとこれまた美味で。
すぐにお茶も桜餅もなくなった。
機嫌がなおったらしい松寿丸に嬉しくなった。
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あれからしばらく今まであったことを話し合った。
時間が経つのは早く、今、松寿丸はもう城に帰っている。
ただ、松寿丸は親の話は一切しない。
もと居た世界の知識ではどうやら仲が悪いだの、一斉に亡くなるだのという話しだった。
本人が言いたくないなら無理には聞かないようにしている。
松寿丸が城主になるときっと中々会えないんだろうな…。
あ、そう言えば読唇術を学んだ今ならと思い、母さんの口の動きを思い出してみる。
う、ま、れ、て、き、て、く、れ、て
あ、り、が、と、う…?
「小弥太-」
父さんの呼ぶ声が聞こえたので涙が出るのを堪えて、父さんのいるであろう場所に向かった。