第1章 ある日の珊瑚礁(GS3 琉夏)
「瑛くん、教えてあげたら?」
「またおまえは無責任にそうやって…。……ちょっと待てよ。桜井、おまえ日曜暇か?」
「日曜?うん、アイツがどっか行こうって言わなきゃ暇」
「……よし、じゃあ日曜朝、ここに集合。そしたら教えてやらないでもない」
「やった!」
そのやり取りにデジャヴュを感じた。
すごく、嫌な予感がする。
「ちょっと……瑛くん、もしかして……」
「おまえも来るんだぞ。言い出しっぺなんだから」
「えー?!やだよ!」
まさかのとばっちりだ。
言い出しっぺもなにも、わたしはちょっと口添えしただけなのに。
「佐伯さん、アイツも連れて来ていい?」
「もちろん。あ、水着忘れんなよ?おまえも彼女も」
「?オッケー、伝えとく」
水着を強調した瑛くんに嫌な予感は当たりだと直感した。
ハテナを浮かべつつも了承した琉夏くんに、余計だと思いつつも口を開く。
琉夏くんはともかく、何も知らないあの子に悪いもん。
「ちょっと、琉夏くん、やめとこう?やめといた方がいいよ……」
「なんで?」
「あのね……ムグッ!」
みなまで話そうとした口を背後から瑛くんに塞がれた。
「いーや、なんでもない」
「んー!んー!」
「?ふたりして変なの。ま、いーや、日曜楽しみだなー!」
「ああ、楽しみだな」
後ろで清々しいほどの笑顔を浮かべた瑛くんにひやりと汗が伝った。
あれだ。瑛くんは間違いなくあれをやらせる気だ。
手を離されてからもわたしが言おうとするたびに、瑛くんの眼光が鋭くなって、結局琉夏くんが帰るまでにわたしはそれを口にはできなかった。
閉店したあとに、あの子から「日曜楽しみにしてます」なんてメールが届いて、わたしはガックリと肩を落としたのだった。
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あれ=伝説の水着エプロン
女子高生じゃないけど、デイジーとバンビの水着エプロンの貢献度は素晴らしかったそうです。