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GSシリーズ短編集【ときメモGS】

第4章 はじまりとおわり(GS2 古森)


わたしがいくら古森くんを好きでも、あのふたりの間には、わたしが入る隙なんて全然ない。
わたしがいくら好きだと叫んでも、古森くんは絶対振り向かない。

我ながら、なんて不毛な恋をしたものだろう。


「…なんか、お似合いだね」

思わず口をついた本音。

古森くんを見上げて微笑む彼女と、愛しそうに彼女を見て口元を綻ばせる古森くんと。

ふたりが並んで出来た、寄り添う影が。


羨ましいのに、素直にそう思った。


「だよなー、お似合いだよ」

「マジ羨ましい。あー彼女欲しー!」

呟いたクラスメイトを横目に、わたしは鞄を持つ。

「ん?帰んの?」

「うん、寄るとこあるんだ」

「ふーん…、またなー」

「また明日ね」

未だ窓から正門を眺めているクラスメイトに手を振って、教室から出た。

本当は、寄るとこなんて、ない。

ただ、教室から離れたかっただけ。


静かに加速して始まった恋は、誰にも知られることなく、静かに終わってしまった。

あの、教室で。


廊下を歩いていると頬に違和感を感じた。

「あ…」

触れてみれば、それは涙で。

気付いた途端、堰を切ったようにボロボロと溢れて止まらなくなった。

「うッ、…うぇッ、ひっ…」

その場にしゃがみ込んで嗚咽を噛み殺す。


はじまりを知らないでいたら、泣かずにすんだのか。
でも、気付かなかったら、見つめるだけで幸福だった日々はなかった。
苦しいのも哀しいのも嫌なのに、あの時間だけは欲しいだなんて、矛盾してる。


恋をして失って、初めて流した涙は、哀しくて、苦しくて、悔しくて。

それでいて、温かかった。




――――――
初古森くんがこんなんでいいんだろうか。
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