第4章 はじまりとおわり(GS2 古森)
三年生に進級して、同じクラスになった古森くんは、笑顔の可愛い人だった。
少し訛った話し方も、照れると俯いて髪を触る癖も、優しいところも。
気付くたびにどんどん惹かれていった。
異性に惹かれる、すなわちそれは、恋のはじまりと言うことで。
教室でクラスメイトと笑う姿を目で追って、授業中は彼の背中を見つめて。
自覚した頃には時既に遅し。
わたしは古森くんに対して引き返せないほどの恋愛感情を持っていた。
はじまりとおわり
「あれ?古森は?」
「もう帰ったぜ。ほら、今日は例の…」
「あぁ!例の、な!」
クラスメイトが話す話題に、近くにいた女子が乗っかる。
「え、例のってなに??」
好きな人の話題にあたしも同じように食いついた。
「あれ、知らねぇの?あいつさぁ、毎週木曜は彼女が迎えに来るんだよ」
"彼女"
その単語に、脳天を貫かれた気がした。
彼女、居たんだ……。
くらくらと目眩のように視界が揺れた。
それからのことは、よく覚えていない。
どうやってクラスメイトと別れたのか、帰りの道順も、家に帰って何をしたのかすら、思い出せなかった。
彼女が居ると知ってからも、わたしの目は古森くんを追ってしまう。
習慣のようになってしまっていて、気付けば視界に古森くんが居るのだ。
可愛いと思った大好きな笑顔ですら、見かけるたびに、哀しくて、苦しくて、仕方なかった。