第3章 月光小夜曲(GS3 琉夏)
痛かったのか、本当は嫌だったのか、彼女に問い掛けても、彼女は首を横に振るばかりで、さっぱりわからない。
「どうしてずるいの?ねぇ、ちゃんと教えて?」
教えて欲しい。
俺、おまえに嫌われたら、生きていけないよ。
顔を寄せた俺に観念したのか、彼女はようやく口を開いてくれた。
「……ルカ、慣れてるふうだったもん……。わたしばっかり、緊張してて、ずるい……」
「……そんなこと?」
「そんなことじゃないもん!……あと、ルカが慣れてるのが、ちょっと……いやだった」
俺からしたら、そんなことだ。
昔、遊びで女を抱いたことがある。
ただそれだけのことで。
それでも彼女は"そんなこと"を真剣に気にしてくれる。
何だ、俺、すごい愛されてるんじゃん。
視線で俺の様子を窺う彼女に笑みが零れた。
「……俺、愛のあるセックスしたの初めてだよ」
「なッ……!」
「ついで言うと、こんなに緊張したのも初めてだし、こんなに早かったのも初めて。キスだけでイきそうに「わぁッ!もう、わかった!わかったから!」……どうして?ちゃんと聞いて」
そっち系の単語に慣れていないらしい彼女は、耳まで真っ赤になって、顔半分をシーツに隠して俺を見ている。
「こんなに誰かを愛おしいと思ったのも初めて。たぶん、おまえが関係することは、これから全部、俺にとって初めてになるよ。それじゃ、だめ?」
首を傾げて彼女に詰め寄ると、彼女はシーツの中で口をぱくぱくさせながら、なんとか頷いた。
「……それで、いい」
その上、「……もう、わたし以外、見ちゃいや」なんて可愛らしいオマケつきで。
ばかだなぁ。
おまえ、頭はいいのに、こうゆうことにはてんで鈍いよな。
俺はあの頃からずっと、おまえしか見てないよ。
それは、これからも、変わらない。
未だに真っ赤な彼女の額にキスをひとつ。
くすぐったそうによじった体を自分に引き寄せ、きつく抱き締める。
「愛してる」
「……わたしも」
腕の中の世界一愛しい彼女は、月明かりの下、柔らかく笑んでいた。
―――――――
は、恥ずかしいな…!