第3章 月光小夜曲(GS3 琉夏)
「ルカはずるい」
高い位置から差す青みがかった光の下、ベッドに横たわったまま、彼女が呟いた。
「……どうして?」
「……どうしても!」
月光小夜曲
廃墟同然だった新しい俺の家が、ようやく人が住んでもおかしくないくらいに完成して、この春、幼なじみから恋人に昇格した彼女を初めてここに呼んだ。
部屋のお披露目を済ませ、彼女の手料理を頂き、夜になって、そろそろ送るよ、と口にしたら、彼女はこう言った。
「……今日は、カレンとミヨと、お泊り会する、って、言ってきた……」
耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうに。
「……マジ?」
つまりそれは、ここに泊まるってこと、だよな?
「……嫌だったら、帰る、けど」
「嫌なわけない」
「本当……?」
黒目がちな瞳を潤ませて彼女は俺を見上げた。
その仕種に、心臓はバクバクと音をたて、激しく鳴る。
やばい、どうしよう。
「嫌じゃない。嬉しいけど……ここに泊まるって、どうゆう意味か、わかってる?」
「……わかってる、よ?」
しっかりと俺を見据えたその視線に、ほんの少しだけ残っていた理性がどこかに飛んでいった気がした。
そのあとはハッキリ覚えていない。
情けないことにいっぱいいっぱいだったらしい。
深いキスをしただけで、爪の先まで痺れたような快感が広がって。
初めて女に触れたとき、いや、それ以上にガチガチになって、恥ずかしいことに、指先が震えてた。
とにかく、彼女が痛くないように、喜んでくれるように、必死だった。
実際、そんな余裕なんてなかったけど。
そこへ、あのセリフ。
俺、なんかした?