第1章 離反ものがたり
個々に強く、なんて馬鹿げた話。
共に在って強くなればいい。
もう離れない。
頼まれたって離れてやるもんか。
これからは、いちばん近くに居てやる。
傍らに寄り添い、俺があんたを支えてやる。
誰よりも傍で、誰よりも近くで、あんたが進んで行くのを見ていたい。
離反した奴の言う台詞じゃないけどさ。
だけど、今、強くそう思うよ。
「凌統!甘寧!おまえらも来い!呂蒙が喜ぶ!」
遠く、回廊の端から刹那の声が響く。
どうしても君主さまに逆らうのは憚られるらしい隣の軍師さんは、何だか納得いかない表情を浮かべているけれど。
「はいはい、今行きますよ」
そんな様子に、本当に戻って来れたのだと、嬉しくなった。
急かす刹那の声を聞かないふりして、しっかり聞きながら、ゆっくりと踏み締めるように足を進めた。
何を想って離反したのか。
そんなの口にするまでもないっつうの。
あんたが好きだからに決まってんだろ。
この言葉は、いつか伝えるよ。
俺が俺らしく、あんたの隣に並べた時にでも、ね。
.