第2章 別れと継続
正面からじゃなくて、真横から抱きしめられた事で肩に先輩の胸が当たった。
引き締まった体の奥の、先輩の鼓動。
悲しそうな表情だったのに速い。
ヌルッと舌で舐められた後、強く吸われた刺激で、一瞬チクリと痛みが襲った。
「これでお前は俺のだ。もう触れさせんなよ……」
わかってる。
この人が今どんな思いかも、私がこの人を好きってことも。
でもお互いにわかってるんだ。
これから先、また私は岩泉先輩じゃない人ときっと体を交わらせる。
例え岩泉先輩に何を言われても、及川先輩がいる限り。
けど、だからこそ今しかないんだ。
「今しか、ないの……」
「わかってる。お前に好きな奴ができるまででいい。ここに戻ってくる時があるなら、それまでは……」
“俺の物でいろ”
離れてしまうし会えない。
お互いに何をしてるかさえわからないけど、大丈夫な気がした。
岩泉先輩なら、大丈夫。
「シホ、好きだ」
そっと唇を交わらせて舌を絡めあった。
親が帰って来るかもしれないから、それ以上のことはできなかった。
「メールするし電話もする。ちゃんと好きだから……心配すんな」
扉が閉まる寸前、岩泉先輩はそっと笑顔を見せて頷いた。
また、会う日まで。
けど次に会う時には、私と岩泉先輩はまたやり直さなくちゃ。
隣にいるのに抱きしめ合えない、背中合わせの隣同士に……。