第13章 敗北の慰め
体育館の廊下の端に寄りかかってタオルで汗を拭いてる岩ちゃん。
確かに機嫌悪そうかも……。
愚痴言いに来たのに怖気付いちゃうぐらい不機嫌オーラ出てる。
「岩ちゃんもシホに裏切られて傷心中?」
「あ?んだよ、クソ川かよ」
「ちょっと。さっきまで大活躍してた相棒にクソはないでしょ」
せめて今ぐらいまともに名前で呼んでよ。ていうか“なんだよ”って一言余計だし。
岩ちゃんの横に並んで壁に寄りかかる。
うざがってちょっと距離をあけられたのは見なかったことにしよう。
岩ちゃん昔はもっと俺のこと大好きだったのに。
「シホさ、完全に烏野サイドみたい。烏野応援してたの?って聞いたら、うんーって」
岩ちゃんは何言われたの?
尋ねれば舌打ちして答えてくれる。怖っ……。
ホントいい加減にしてよシホ。
「おめでとうって、泣きそうな声で言われた。……あのボケ」
「岩ちゃんがシホを悪く言うなんて珍しーね」
「別に悪く言ってるつもりはねえよ。腹立つけどあいつが通ってんのは烏野だろ。…応援するのは当たり前だろが」
うっわー、全然納得いってない声。
岩ちゃんめっちゃシホのこと大好きじゃん。なんなの過保護?親なの?
俺の知らないところでシホにまでオカンを発動させてるのかな。旅館の時も部屋に送ってあげてたし。
険しかった心が、もっと険しい心の持ち主を見てなんだかおさまってきた。
「あーあ…。シホが青城に来てれば万事オッケーだったのにね」
「そうだな」
「ていうかなんで烏野」
「家近いっつってただろ」
「今更こっちに来なかったの許せないんだけど」
「……そうだな」
何その間……。
「今の間なに?」
「何がだよ」
「俺結構シホがウチに来なかったの根に持ってるんだけど。シホには言わないけど」
だから岩ちゃんにはもっと賛成して欲しいというか。
ガツンと「だよな!」って言って欲しいんだけど……。
もしかしてこの短時間でシホがうちに来なかったことに納得してるわけじゃないよね?
てかむしろ応援してないって言われた今こそ気にするところじゃない?
らしくないなあ。