第1章 始まり
及川先輩は確かにびっくりするぐらいイケメンなんだけど、正直セクハラに関しては嬉しくない。
私なんかみたいに、女子力を高める努力もしないし、まともに異性と付き合ったこともないような魅力皆無の女のことを相手にしてるのも矛盾だらけだし……。
「先輩の周りには可愛い子いっぱいいるじゃないですか。彼女作って堂々とそーゆー事して下さいよ」
「えー。真白嬉しくないの?女の子なら大抵及川さんに構ってもらえるの嬉しいと思うんだけど」
ニコッと笑って首を傾げる彼の動作が私を腹立たせる。
こんな自意識過剰みたいなナルシスト発言だけど、それも本当のことだから怒るに怒れなくてむず痒い。
及川先輩の部屋で二人っきり。この時点でたくさんの女の子の願望を独り占めにしてるのはあながち間違いじゃない。
でもやっぱりピーンと来ないというか……。
「私は不思議なんです。…どうして及川先輩みたいな人気者がわざわざ私なんか呼びつけたのか…」
部活絡みならマネージャーじゃなくて選手を呼べばよかったと思うし、そもそも岩泉先輩の方が話題があるはず。
及川先輩は楽しそうに鼻歌交じりに私の顔を覗き込んでくる。
「ふっふーん。無自覚さんは可愛いね〜本当。これから二年間も飛雄ちゃん達と一緒に部活するとか妬けちゃうな〜」
何?無自覚って。
それにどうしてそこでその話題が……?
この人、やっぱり読めない。
「あ。じゃあさ、俺じゃなくて岩ちゃんが構ったら不思議じゃないの?」
「別に不思議ですけど……」
岩泉先輩なんて同じぐらい関わり無かったもん。
でもやっぱり及川先輩は女子からの人気度が違うというか……。
私とか恋愛経験もまともにないような奴だし。
「ふ〜ん……」
急にニヤリと笑った先輩。
な、何ですか……!
怪しい香りがするのは気のせいかな?