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Dye D? 3

第26章 喪失  5






 横山は手にあたる

冷たい水の感触を感じながら

皿を洗っていた


冷たいと感じる事・・・


普通の人間ならば当たり前の事が

今は新鮮でならなかった






皿の水を綺麗にふき取り

棚に直していると

そこに大倉がキッチンに入ってくるなり

片づけをしている横山を見て声をかけた




大倉「・・・そんな事は俺がするよ」



大倉の申し訳なさそうな言葉に

横山は少し笑った



横山「ええんや

今は人手が足りんねんから

俺も皿ぐらい洗うよ」



そう言いながら皿を棚に直し続けた



横山の言葉を聞きながら

大倉は悲しそうに瞳を潤ませ




大倉「マルが、ゲストを連れて来た・・・」




大倉の言葉に横山は静かに頷くと



横山「そうか、また食事を用意するわ」




そう言い

キッチンの奥の皿に向かおうとすると

大倉が横山より早く動き

横山が手を出そうとしている皿に手を添えた




大倉「・・・・これは俺が温めて持って行くよ」



大倉の行動に

横山は戸惑う姿も見せずに

受け入れるように

静かに口を開いた




横山」「そうか・・・・

ほんなら、頼むわ」




そう告げると大倉に背中を向けて

キッチンを出ようとした



大倉「俺たちがいる事を忘れないで・・・」




出て行こうとする横山に

大倉は寂しそうに言った



すると横山は背中を見せたままで




横山「一瞬たりとも忘れた事はないで・・・」




そう言葉を残して扉を閉めたのだ






大倉は、ゲストに出す

食べ物を見てため息を付いていた




今から起こる出来事を思うと

自分の気持ちの

闇を払うことが出来なかったのだ


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