第14章 イヤミの娘奪還大作戦
【松野家】
梅子は今日も1人で自宅警備員、つまりは留守番をしていた。
六つ子はいつもより忙しなく身だしなみを整えて早くから出かけて行ってしまった。
特にすることもなく、ただぼんやりとテレビを眺めながら六つ子の帰りを待っていた。
何もしていなくとも、時間だけは過ぎていく。
気づけば日が暮れる時刻になっていた。
カラカラっと扉が開く音が聞こえた。
(帰ってきた!)
梅子は変に緊張して膝の上に置いた拳をギュッと握りしめる。
ドドドドドっとたくさんの足音が鳴り響き襖が勢いよく開かれた。
「「「「「「梅子(ちゃん)ごめん!!!」」」」」」
そのままなだれ込むように部屋へ入ってきたかと思うと、6人とも綺麗に並んで土下座をする。
『……え!?どうしたの??』
戸惑った表情の梅子に、6人はもう一度ごめんと謝ると事の経緯を説明した。
ーーー
『レンタル彼女の正体がパパとチビ太さん!?』
「そうなんだよ~、デカパン博士に頼んで薬貰って化けてたんだよ!詐欺だよ、詐欺!」
トド松は「悔しい~~!」と足をバタバタさせながら言った。
「あのさ、」
ずっと黙りだったおそ松がぽつりと呟いた。
みんなの目線がおそ松に集まる。
真剣な顔でこちらを見つめられて、思わず固唾を飲んだ。
「俺梅子ちゃんと付き合ってるのに浮気してごめん。これからはもう梅子ちゃん一筋です!」
「「「「「………」」」」」
『え、えっと……』
何を言われるか緊張していたはずなのに、的外れな言葉で内心ホッとしてしまった。
「そもそもお前と梅子ちゃんは付き合ってねーよ!!」
このよく分からない空気を壊したのはチョロ松で、その言葉をきっかけに他の兄弟達も「そうだそうだ!」とおそ松に抗議し始める。
わちゃわちゃと六つ子が騒ぎ出し、久しぶりに日常が帰ってきたようだと梅子の顔にも笑顔が零れた。
(みんなといるとやっぱり楽しい)
あんなに寂しかったはずなのに、その事さえ忘れてしまうかのように嬉しさがこみ上げる。
この後、明け方まで六つ子達と離れていた時間を埋めるかのように
たくさん話やゲームをした。
(ところでパパはどうなったんだろう?)
ふと、頭の中にイヤミの姿がよぎった。