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【HQ】バンパネラカンタービレ【R18】

第47章 永遠に美しく。


何故だろう、不意に目頭が熱くなる。
零れそうになった涙をぐいと手の甲でぬぐい、国見は温室に歩み寄った。

そのカサカサした音に気が付いたのか、彼女が振り向く。
逆光でも分かる、真っ紅な眼が彼を見た。

「あ、どうも…」
国見の言葉に彼女が立ち上がる。
サラリと艶やかな黒髪が肩から落ちる。

「国見くん」
紅い目をした彼女が声を発する。
国見は駆け寄って彼女をかき抱いた。
「つむぎちゃん」
どうして分からなかったのだろう。
彼女は――木原つむぎ。
自分の大切な人ではないか!

「思い出してくれましたか?」
抱いた体は真昼間だというのに冷たい。
「今までどうしてたの?」
「私の『親』の血だけで食い繋いで完全な吸血鬼の体作りを…」
「何で」
「吸血鬼に成る為に」
にこっと笑う顔は前にも何度も見ているのに何故だかひどく遠く見えた。
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