第43章 the night Walker.
「あなたはもしかして…」
「思い出した?」
昔、まだ中学生だった頃、冬の深夜徘徊していた私は雪の中にうずもれて眠る人に出会った。
その人は治らぬ病で苦しんでいるんだと私に告げた。
長く『食事』をしていないから、朝が来たら陽の光で体は溶ける。
それを待っているのだと。
『食事』とは何だと聞くと人の血だと云う。
食事をすればほぼ問題なく生きられる。
ただ人と関われば、愛しくなってしまう。
長く夜闇に生きてきたというその人は泣いていた。
愛しくなれば共に在りたいと願ってしまう。
それは難しい。
人の血を吸い続け、心まで鬼に成り果てた化け物を増やしてしまうだけなのだ。
化け物になってしまえば、人として生きてはいけない。
バンパネラという病がすっかり体に根付いてしまってはもう引き返せない。
人としての心を忘れず無垢であれば病は癒える。
しかし逸脱してしまえば戻れない。