第43章 the night Walker.
「あ、申し遅れました。ありきたりなトイレの花子さんと三年の教室に閉じ込められた女生徒の霊を兼任しています蓼科です」
『よろしく』と、近づいてきた彼女が私に手を差し出す。
思わず握手したそれはやはり冷たい。
「にのは?」
「今日こそタイム切れそう、と走ってます」
蓼科さんが私達を窓際に誘導する。
やはり非常灯がうすぼんやり照らすグラウンド。
そこに何かいる。
走ってる?
「にのくんは陸上競技が好きすぎだね」
「彼はもうそれしか頭にないのですよ」
部長と蓼科さんは訳知り顔で話している。
「あの、肝試しは?」
私が云うと、部長がフフ、と笑う。
「うん。だから彼女がトイレの花子さんと三年の教室に閉じ込められて死んでしまった女生徒の幽霊だよ?」
だ、だよ?って…。
「で、あれが走る二宮尊徳像」
蓼科さんがグラウンドを指差す。
「後は目が動く美術室の絵、動く人体模型、吸血する校長室の鉢植えだっけ?」
かかッと笑う石和部長に蓼科さんが神妙に頷く。
「後一つは?」
私の言葉にぴたっと笑い声が止まる。
え?
「ありきたりだよ。知ったら引き返せない系さ」
部長が事も無げに云う。
は、はあ。
「簡単な話だ。後の六話と合わさった話だ」
「なんですか?」