第42章 あなたと最後の口付けを。
「えー、及川さんじゃないの?」
及川先輩が固い空気をまぜるようにおどけたけど、私も誰も笑わない。
「ッ…ハァ、ん。じゃあ明日で。はい、みんな帰ろう」
パンパン手を叩いて及川先輩。
みんながぞろぞろ入り口に向かう。
私はその波に押されて前に追いたてられ入口を開ける。
「及川さんを選んでくれるって、信じてる」
「無理はするな。…でも、お前は俺の彼女だ」
「選ばなくていいけど、又よろしく!」
「同左」
「ねぇ!オレワンチャンあるよね?」
「お弁当、また、食べたいです」
「…あれは、本音だ」
「…木原が、誰かのものになるのは正直しんどいな…」
みんなが私を抱き締めたり手を握ったりしながら出ていく。
「国見くん」
最後には彼が残った。
「今何を云ったら良いか…わかんない。でも…」
うっ、と国見くんがつまる。
白い頬にツゥ、と透明な雫がすべる。