第3章 花嫁のお仕事!
「じゃあ」
のしかかるように肩をつかまれた。
「こら矢巾、調子に乗らない。及川さんの目の黒い内は首筋は噛ませないよ」
及川先輩の言葉に矢巾先輩は私にしか聞こえない程小さく舌打ちした。
「矢巾、聞こえてるからな」
岩泉先輩にもチクリと云われ、矢巾先輩が私の手を掴む。
そしてその甲にずぶりと犬歯を突き立てる。
「あっ、ひぁっ」
声が漏れた。
はっとして片手で口をふさぐ。
圧倒的な存在感が皮膚を突き破って入ってくる。
やわらかい血管の壁をたやすく噛み開き牙が内部に分け入った。
無意識に震えていたはずの足が違う意味で揺れすり合わせられる。
噛まれると、…気持ちいい。
口を押さえた手を噛む。
くりゅくりゅと牙が穴を探り血液を吸い上げるとこそばゆいような気持ち良さが止まらない。
「んっ、ふっ」
こらえきれなかった声が吐息になって指から漏れる。
指は唾液でベトベトで。
したたって落ちそうだ。