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【刀剣乱舞】 顧恋抄 【短編集/R18含】

第1章 恋を詩え 風がさらう前に 【燭台切光忠】






「光忠・・・?」

心配そうに問いかける貴女の声が、もっともっと聞きたくて

「光忠っ・・・」

揺れる髪から零れ落ちる甘い香りが、まるで包み込むかのように舞い降りて

「ねぇ、光忠っ」

知っているんだ・・・ こうすると・・・

「――――きゃっ」

・・・ほらね・・・

目の前には、貴女の双眸が、驚きの色を隠せずに瞬いている。
黒曜石の様に、深く潤んだその瞳。

「もう、急に目を開けないでよ~」

驚きと安堵の双方を含む表情に、あってはならない親近感を覚えてしまう。


そう、決してあってはならない・・・この想い・・・


「・・・? どうしたの?」

一瞬の表情の翳りを察してか、再び心配そうな眼差しで覗き込む。その優しさに触れる度、心の底から想いが溢れ出してきてしまう。
堰き止めなくてはと強がる思考は、心と裏腹の言葉を紡ぐ。

「美桜様でも、その様に女性らしい驚き方をするなんて、意外過ぎて」
「失礼ね」

ついと少しだけ口を尖らせ、顔を背けるその拗ねる仕草も可愛くて

「冗談です」

悪いなとは思いながらも、堪える笑みは喉からよりも肩に表れてしまう。

「そうやって、すぐ人の事をからかうのだから」

そう怒った様な顔で言いながらも、どこか笑みを浮かべている貴女。

「申し訳ありません」

お互いがお互いの顔を見合わせて、どちらともなく笑みかこぼれる。
ふわりと香る、風が詠う。
貴女を、我が主を包み込むかのように優しく詠う。








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