第24章 あたたかい、背中
「おい、帰るぞ」
「んー。
そうだねぇー」
「青雉から連絡は?」
「んー。
オヤジにはいってるみたいだよー」
「こっちには?」
「マルコに言えばくれるかもー」
ローと赤司からの質問に答えながらも、龍輝は目を閉じた。
今日の出来事は、全て予想外過ぎて。
自分の弱さが明るみになって、悔しい気持ちでいっぱいだった。
そして、改めてテツを押す方法でしか守れなかったことに、ミズミズの実の人間になったことに、最強と言われたことに、恥ずかしい気持ちになった。
「寝ちゃダメですからね?」
「んー。
ちょっと考え事だから。」
「このまま寝るぞ」
「寝ますね」
寝るのを否定したはずなのに、いつも近くにいた2人からは否定され、苦笑を浮かべた。
いつも近くで見てる彼らだ。
だからこそ気づくものもある。
「ほら、帰るぞ」
感じたのは、冷たい無機質なものではなく。
温かくて、柔らかさを感じる。
聞こえてきた声はローよりは、少しだけ高い声。
眠くてしょうがない重たい瞼を開けると、いつもより低いその視線の先に、あぁ、背負ってくれているのはもう一人のローと声が似てる、彼よりも完璧であることを見せようとして、でもまだ子供な彼。
そのまま力を抜いて、彼に任せることにした。
「寝ましたね」
「だな。
力が抜けてる感じがする」
赤司は、龍輝を背負っていた。
テツに助けてもらい、背負うことは出来たのだが、寒くないように午前中に貸していたジャージをまた彼女へとかけていた。
新校舎にあったのだろう、洗濯機をいつの間にか回していて、部活の時にはすでに乾燥している状態で渡されていた。
洗剤は龍輝が好きなものを置いているのだろう。
彼女と同じ香りが自分からしていたことに、少し彼女へと向けている好意が変わりつつある赤司にとって、それはプラスへと導くものだった。