第17章 “海”の定義
「では何故。
今回はその水に嫌われた?」
「うーん…
どうやら、この世界の水、というより海水は前世の海からすると凶暴みたい。
触っただけで、私たちはダメになる。
ローたちは力が抜けて座るだけ。
すぐに立ち上がることが出来るんだけど、私は身動き一つ取れないカナヅチになってしまう。
最強から最弱の悪魔の実の能力者になったったわけ」
自分の手のひらをじっと見つめながら言う龍輝はまだ力が手に入らず、赤司たちから見える龍輝の手は僅かに指先が動いているだけで、こうやって起き上がっているのも、話しているのも実はキツイはずだとその光景を目にしてはっきりした。
「龍輝、もう大丈夫ですから。
横になってください」
「だって…テツ…と、ちゃんと…話せてないもん…
テツに…きらわれたら、いや…」
「!」
泣きそうになっている龍輝の姿を見て、テツは近くまで寄ると抱きしめた。
切れ切れになりながら伝えてきた言葉は今のテツにとって、心に突き刺さることで。
少しだけ恐ろしかったと思っていた自分を殴りたいと思った。
龍輝は龍輝だ。
大事な妹なのだ。
「大丈夫です。
僕は龍輝を嫌いになったりしません」
その言葉に安心したのか、テツに身体を任せながら力を抜いていき、目を閉じた龍輝は眠り始めていた。