第2章 情報の共有【Ⅰ】 小さな背中
銀時side
俺は失った。
大事な絆も。それを象徴した師匠も。
だからこそ、アイツ等には同じ過ちをしてほしくない。
今ある幸せを大切にして、感謝して。
馬鹿やって、はしゃいで、そうやって自分の道を、志を進んでほしい。
そう思ってる。
___________________わからない、と女は呟いた。
「……どうして貴方はそんなに強いの?」
噛み締める唇から掠れた声がでる。
私は今でも思うのに。
力があったら、お金があったらって。
哀しみが滲み出るような声。
その様子を見てると好んで人を斬るような人には見えない。
「……テメェ、何があったんだ。見たところまだ10代だろ。」
銀時が問うと女は瞳を伏せる。
そして少し悩んだあと言葉を紡ごうと唇を動かした____が。
『もういい。』
静かで威圧的な言葉がどこからか発せられた。
女は肩をびくりと震わせ、ちょっと、と襟元に向かって話す。
銀時も驚きは隠せないが、すぐにこの会話は第三者にも聞かれていたと理解した。
『これ以上は時間の無駄だ。』
「で、でも。」
『わかるだろ。この人にはこの人の生き方がある。』
声からすると男か。
大人びた、まるで生徒を諭すような先生の声。
「テメェ……男だな。誰だ。」
『名乗るつもりはない。』
そういや、この女の名前も知らねぇ。
「おい」
『残念ながら、そっちの女も名乗らないように指示してある。』
銀時の聞こうとする事は読まれていたのか男の言葉によって遮られる。
内心舌打ちをしたが、ここで反応したら相手の思うツボだろう。
「お前最低だな。女に顔を見せといてお前は高みの見物ですか。」
『白夜叉様は女に飢えていると聞きましたので。』
「……喧嘩売ってんのか。」
『まさか。とんでもない。まぁ、刃は欠けてしまったようですが。』
声しか知らない相手にこんなにイラついたのは初めてかもしれない。
そう冷静に分析しながら銀時はキレる寸前だった。