第2章 情報の共有【Ⅰ】 小さな背中
銀時side
「色坂吉津?溝旗能義道?!」
土方は驚きで声をあげる。
「なんだテメェらしってんのかコイツら。」
「知ってるもなにも最近人斬りに殺された幕府の重鎮だ。」
ハッとした表情をするのは近藤。
歯を食い縛り、唇を噛むのは沖田。
「なら……その犯人は……。」
「そいつじゃねぇぞ。」
銀時は土方の言葉を遮った。
そして、驚く三人をよそにまた話を続ける。
「いいから聞いとけ、それで終わりじゃねぇ。」
______________冷たくとも怒りに燃える瞳をこちらに向ける女。
正直その姿は美しいと感じた。
「ここまで言えば分かりますよね。」
あァ、分かるさ。
わかりたくねぇがな。
そう心のなかで呟き、厳しい瞳で女を睨み付ける。
「まさかとは思うが……テメェ
俺を攘夷浪士に引き込もうとしてねぇか。」
黒い双つの瞳が銀時をとらえる。
首を縦にふることも答えることもなかったが、その雰囲気と沈黙が答えだった。
「冗談じゃねぇや。俺は犯罪者の片棒は担がねぇぞ。」
「……。」
「ましてや、将軍を狙ってるやつなんか。」
推測を口にすると女の肩が不自然に反応し、これでもかというくらい苛立ちをぶつけてくる。
華奢な体からあふれでる憎しみに心のなかでは戸惑いながらも、銀時はまっすぐと女を見つめ、言った。
「お前もまだ若いだろ。しかも女だ。人生棒にふらないうちにやめとけ。」
自分があの戦いで人生を棒にふったわけではない。得たものだってある。
しかし戦うということは亡くすということと隣り合わせだ。
愛でも、友情でも、信頼でも。
戦争は、戦いは無情にそれを奪っていく。
そんな思いをする日とが増えるのは銀時は真っ平ごめんだったのだ。
しかし、彼女はそうは思わなかったようで。
「女だからってバカにしないで。」
大きな目をつり上げ、キッと銀時を鋭く睨み付ける。切れ味のよい刃物のような視線が銀時を貫く。
そしてごそごそと着物のなかを探ったあと、彼女は銀時の目の前に当分働かずに暮らしていけるであろう大金をおいた。
その額におもわず銀時は目を見開く。
それに反し、女はその額に反応することなく、相変わらず銀時を睨み付けている。