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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第16章 邪魔だ、どけ



銀時side

何て強い瞳なのだろうか。

真っ直ぐな月詠の瞳にひきつけられる。

彼女のまっすぐさが心に刺さる。
鋭くも優しい、その瞳が心に刺さる。

「男前だな…。」

困ったように笑いながら銀時は言葉を紡いだ。
その言葉に微かな柔らかさが感じられて月詠も安堵する。

「お主ほどではない。」

赤い唇が口角をあげた。
より艶やかさが増した彼女の顔にはすべてを守ると決めた傷が存在している。
けれどそれを嘲笑うものなどいない。
ここは彼女を知って、尊敬するものたちが溢れる場所だから。

吉原の月。
太陽の光を受けて輝く月。
いまその月は銀時達を信じてくれている。
なんと心強いことなのだろうか。


「お前たちは、しってるか?」


怖さがないわけではない。恐らく一歩間違えれば彼女が死ぬ。そんな危険性を孕んだ道。
けれど救わないという選択肢を選んでも待つのは地獄だ。


「夕時雨を。」


重たい扉を開くとき。
この選択を後悔する日をつくるとき。

過去を抱いて、未来を決める、そんな日。

きっとあいつは嫌がるだろう。
自分の人生がこんなところで左右されていることを。
けれど見捨てられない。

あの日の自分のような、自分達のようなあの二人を見捨てられない。
あの腐れ縁を見捨てられない。

止めるのも、進むのも決めるのは自分だけだ。

「お前たちと同じように春雨の支配下にあった遊郭だ。そこについての情報が知りたい。」

声は真っ直ぐで、迷いはない。吉原の月に感化されたのだろう。
ちらりと横目で新八と神楽を見れば、ふたりも覚悟を決めたように首を縦にふった。

神楽の小さな手はすこし一度だけ震えたけれど。

銀時はそれに気がつかないふりをして微笑んだ。



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