第16章 邪魔だ、どけ
銀時side
かちゃん、と音をたてながら銀時たちの前に湯飲みがおかれた。
どうにも日輪たちと目を合わせるのが気まずい銀時は湯飲みを凝視する。
何度見ても幸運の印がないことなど知っているのに、それを探すように。
神楽も膝の上の拳を固く握りしめて、うつ向いている。
「…わっちらに出来ることなら何でもするぞ。」
ただならない雰囲気に押された月詠は真剣な表情を浮かべた。
意思を秘めた強い瞳に嘘はない。
「…銀さん。」
新八が躊躇うように銀時に答えを求める。
静けさがその場を包み、緊張と不安がその静けさと一緒に広がる。
月詠ははじまりの一滴を待っていた。
鋭い視線の先は銀時に縫い付けられている。
その視線にもちろん銀時も気がついている。
「…ある依頼がきた。おそらく、お前たちにも関係がある。」
数秒して、銀時は意を決したのか言葉を紡いた。
その口調は重たいもので、ことの重要さを伝えている。
風の音さえ聞こえないここは、互いの息づかいさえよく聞こえる。
「…聞かせてもらおうか。」
しかし月詠はその雰囲気に恐れることなく、答えた。
凛とした視線と言葉にどこまでも誇り高い太陽の番人の気品が見える。
「…イヤなことを思い出すかも知れねぇぞ。」
「吉原の救世主さまの直々のお願い、断る理由がない。」
なにより、と月詠は言葉を続ける。
「貴様らがそんな顔を浮かべるのはよっぽどのことがあるのじゃろう?」
悲壮感、たまらないほど溢れる無力感。
月詠が知らないだれかに向けられた痛いほどの思いやり。
「らしくないぞ。わっちらを救ってくれたときのお節介はどこにいった?」