第16章 邪魔だ、どけ
銀時side
その言葉に小さく神楽が怯む。
肩を少しだけ跳ねさせ、無意識に唇を結ぶ彼女。
新八は少し目を泳がせたあと、助けを求めるように銀時を見た。
おいおい、何かあるって言うよりも先に態度に出てるじゃねぇか____________。
素直すぎる二人にため息をはく。
深く長い銀時のため息は、月詠と日輪に何かあると確信させるとも知らずに。
「参ったな。」
銀時は小さく呟く。
聞こえるか聞こえないかの声は少しだけ震えていた。
何から話すべきなのか。
何から問いただすべきなのか。
どこからどこまでなら聞いても許される?
それに、一番その内情に詳しかったやつはもういない。
そう思い始めると銀時の心のなかに後悔の念が押し寄せてきた。徒労、その言葉が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消える。
この街をあの男から解放したことはもちろん後悔していない。けれどいま喉から手が出るほどほしい彼女の情報をここで得ることは彼がいない今でなし得るのだろうか。
しかしその反対に知らなくてもよいような気持ちもある。その秘密を知って自分が彼女に余計なことをしてまた心を閉ざしてしまうのではないかという迷いがある。
縮まった距離が広がる恐怖はいつだってすぐそばに。
「銀時。」
その時、月詠の声が響いた。真っ直ぐな少し低めの声は矜持を感じさせる。
その声にしたがって視線をあげれば千里と同じようなはっきりとした眼を捉えた。
戦う女の眼。
相違点をあげるとすればそれは希望か絶望のありかただろうか。
「用があるんじゃろう、来なんし。」
夜に輝く月は彼らを導くように言葉を紡いだ。