第16章 邪魔だ、どけ
銀時side
「まぁ銀さん、久しぶり。」
銀時達が重たい足取りで向かった先の吉原で、太陽のような笑みを浮かべながら銀時たちを迎え入れたのはこの街一番の遊女である日輪だった。
口許の紅が彼女の艶やかさを増している。
芯の通った長い黒髪は昨日見た鴨志田たちを彷彿とさせた。
「よォ。」
けれど銀時は表情から不安な気持ちを悟られまいと笑いながら片手をあげた。
いつものような気だるげな意識を忘れないように、目を細めて。
その意識は上手くハマったのか、日輪もいつものようににこにこと笑う。
吉原、ここは江戸の桃源郷。
癒しも快楽も求めれば得ることができる花の街。
きらびやかな女達がそれぞれ思い思いに生きる自由の街にも変貌しつつある、太陽の街。
その、代表株が銀時たちを捉えた。
「何の用だ、銀時。」
肌に傷を抱える死神太夫こと、月詠。
太陽と真逆にいながらどこまでも同じ輝きを放つ、吉原の月。
「よぉツッキー。」
「きやすくツッキーと呼ぶな。」
凛とした炎にもえる瞳の奥底に銀時がうつる。
まっすぐな視線はチリリと銀時の肌を貫いて。
「月詠姉ちゃん、ほんとは嬉しいくせに。」
そんな二人の間にわって入るのが銀時たちがこの街と関わるきっかけになった晴太。
愉快そうに口のはしを吊り上げながら二人を見上げつつ、言葉を紡いだ。
「銀さん、久しぶり。元気だった?」
「あァ。まぁまぁだな。」
相変わらずニートまがいなの?
そんな言葉をからかい口調で漏らす晴太に一発拳を頭に落とす。それでも彼はどこか嬉しさを隠しきれていない様子だった。
そしてまた、その様子を見て微笑む母親たち。
あぁなんて優しさに包まれた空間なのだろうと、銀時は安らかな心地を感じる。
そして同時に胸を痛めながら。
神楽は痛みが強いのか顔をあげない。
小さないつもは働かせない頭を必死に働かしているからか、多くのことに手が回せないようで。
「神楽ちゃん…。」
隣の新八も肩を落とした。
その目は不安に揺れる。
そしてまた、その様子から月詠たちが二人を心配するのは必然だった。
「神楽、新八、どうした。」