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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第16章 邪魔だ、どけ



銀時side

「とりあえず、情報を集めよう。」

かすれた声を銀時は絞り出した。
依頼という建前の元、感情に折り合いをつけることが出来ないまま。

「いいアルか?」

苦しそうな表情を浮かべたまま、言葉を紡ぐ神楽。
髪飾りが不安気に揺れて、儚さを増す。

「いいかどうかは、俺たちが決めることじゃない。」

当事者達が、決めることだ。

喉元まででかかった言葉を飲み込む。

鴨志田が、当事者の一人が会いたいと願ったのだ。
それを叶えないなんて、叶えられる距離にいる俺たちが動かないなんて、怠慢だ。

悪いかどうかなんて他人の俺たちが決めていいことではない。

「でも…。」

「とりあえず、だ。とりあえず俺たちだけで情報収集だ。」

そう言うと、神楽はびくりと肩を跳ねさせた。
この言葉に意味が理解できたのだと察する。

それを確認した銀時は視線を新八に移した。彼はすこしだけ視線を動かしたあと、首を縦に降る。

真選組には言わない。

暗に銀時は彼らにそう伝えた。
そして彼らもまた、それに異論は無いようだ。

「まず、そうだな。」

銀時は躊躇いながらあることを頭に思い浮かべる。

それは夜の闇から抜け出した、あの街のことだった。
キセルをくわえ、死神太夫とよばれるあの女のことも銀時は思い浮かべた。

強さと遊女と春雨。

重なる共通点に引かれるように、銀時は眉を寄せながら立ち上がる。

「いくぞ。神楽、ぱっつぁん。」

ふわりと揺れる独特な柄をした着物。
白銀の髪が太陽の光に反射して、輪郭をぼやけさせる。

彼の口許に浮かべるニヒルな笑みは、複雑な心情を孕んでいた。

「ど、どこにですか。」

怯えたように言葉を紡ぐ新八。
彼のただならぬ雰囲気に驚かされながらも、立ち上がりつつ問うた。

「決まってんだろ。」

ヒュッと息を1つ吐いたあと、銀時は答えた。
額から滑り落ちる汗は、きっと暑さのせいだとおもいながら。

「吉原だ。」


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