第16章 邪魔だ、どけ
銀時side
同時刻、万事屋。
銀時達は朝御飯を食べながら、昨日の一件について考え合っていた。
彼女たちが望んできたことは、社会的には抹殺されなければいけない出来事。
かつ、千里に過去を思い出させてしまう出来事。
依頼は受け入れたはいいが、どうしていいか正直銀時には分からなかった。
自分の過去に触れられる恐怖を知っている銀時にとってこの選択は重たいもの。
さらにこの前見た、千里の泣きそうで憎悪に満ちた顔を忘れられない。
心の琴線に踏み込みすぎてしまえば、今の関係は壊れてしまうのではないか。
やっと宗以外に繋がりを持てた彼女のことを思うと、どうしても残酷な選択は出来ないようにおもえた。
すこし自惚れてもいいのなら、この空間を彼女は失いたくないと思ってくれている。
漠然とした期待が銀時を、神楽を迷わせていて。
いつもとは違う雰囲気に定春が落ち着かなさそうにまた座りかたを変えた。
会わせた方が、いいのか?
銀時の眉が無意識に中央による。
神楽も思うところがあるのか、昨晩から暗い顔を浮かべていた。
時々感じる視線はきっと銀時の答えを待っている。
鴨志田たちは気がついていないようだが、あの二人はあくまでも大罪人。
もうひとつ、神威の訪問がここで繋がる。
春雨、暗殺者(アサシン)、千里________…。
主人と呼ばれていた男が放った、死にかけているという言葉。
姉を失ったという言葉と、推測できる宗との出会い。
あぁ、なんて、なんて救われない。
残酷な始まりだったんだろう。
千里が宗に対して希望を抱く理由も。
宗が千里を拒絶しない理由も。
あの始まりの夜が全てだったのだ。
ボロボロの姿で生きることを諦めていただろう彼女の前に現れた、英雄。
男の前に現れたボロボロの少女。
すがるのも、見守るのも、きっと必然だった。