第16章 邪魔だ、どけ
千里side
「わたしってホント…意気地無し。」
ぐらぐら、ぐらぐら。
桂と仲間になったのに、沖田の様子が気になる。
将軍は討つべき相手なのに、その妹と会った。
千里はこの異常ともいえる状況にやや、困惑し始めていた。
自分の心に対しても、回りの人間の反応に対しても。
あの救いの手が、少しでも前に差し出されていたら。
助けてほしいと一瞬でも叫んだなら。
そんな後悔が時々渦になって、吹き出す気がして恐ろしかった。
宗の傍にいたい。
ずっといたい。
その言葉に嘘はないし、むしろ宗がいなくなったら自分が壊れてしまうことは分かっている。
だからこそ、怖かった。
宗がいなくなったとき、果たして自分は彼らにすがらずに生きていけるのだろうか。
そうしたら自分の心はぽっかりと穴が開いて、生きる意味を失って、中途半端なまま終わってしまうのだろうか。
まだ見ぬ未来が、怖い。
宗が、宗がいなくなったら、自分は?
私は…刃を折られずにいれるのか。
「弱い…私はとても。」
守られる側の怖さ。
それを知り始めたからこそ募る苦悩。
彼を繋ぎ止めたくて得ている今の力。
それを失うことへの恐怖。
「お願い…雪螢。」
私は、守る側を今度こそ全うしたい。
「私に、宗を守らせて。」