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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第9章 雨ときどき雹



千里side

驚きを隠しきれない様子の四人を見ずに、千里はゆっくり外に視線を寄せた。

真っ青な空が自由を感じさせる。

あぁ……あの日と真逆。

闇が世界を覆い、考えることを失った小さな私の生きる道。

その手を引っ張ったのは誰だった?

声焦がれるまで叫べばよかっただろうか。
体をなぶられ、引き裂かれ、大切なものを犠牲にしてでも自分を優先すればこんなに苦しまなかった?

_______いいえ違う。

私が任務を完璧に遂行すれば良かったの。





「千里。」

千里の意識が混濁し始めたとき、この世でもっとも信頼している声が耳に届いた。

虚ろな瞳で彼をとらえれば、すぐそばに彼はいて。

「宗。」

はっきりと名を呼べば、柔らかな笑みを彼は千里に返す。

その様子を見て銀時たちも我に帰ったのか立ち上がり、彼女のそばに向かった。

千里の顔は青白く染まり、病的で、今にも倒れそうなほど。

異様という言い方が的を得たような様子に銀時が息を飲んだ。
自然に手が背中に伸ばされる。

しかし、小さな拒絶が銀時を襲った。
触らないで、言いはしなかったが潤んだ瞳が細められる。

そしてその代わりに、朧気な足取りで宗の胸の中に背中を当てる千里。

鈍い痛みが千里の中に広がり、血の味が広がった。










________神威。



彼は彼女が命令で唯一殺せなかったヒト。



姉を失った始まりの音。



恨んでもない。
憎んでもいない。


ただ、切ないだけ。




染まった紅葉の色をした髪がさらりと揺れた。
吸い込まれそうなアクアマリンの瞳。

その姿を思い浮かべながら、千里は意識を手放した。

自分みずから。


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