第9章 雨ときどき雹
銀時side
「本当の目的、本当の用事、それを尋ねているのです。」
表情の笑みを崩さず言葉を紡ぐ宗。
普通に座っているだけで胸を張っているかのような雰囲気を醸し出す彼に尊敬に似た感情が銀時に湧いた。
「俺が予想するに、姫様関係ですか?」
何も言わない銀時にしびれを切らしたのか、苛立ちを含む棘のある言葉を宗は放つ。
そしてその言葉に喧嘩をしていた二人の動きが止まった。どちらとも少しの意識はこちらに傾けていたのか、聞こえていたようだ。
「姫、様って。」
戸惑いを隠しきれない千里の声が銀時の耳に届いた。なぜここに姫様が話に出てくるのか全く思い辺りがない、そんな様子で。
「喧嘩の続きしてろ千里、俺はこっちで大人の話し合いするから。」
しかし彼は姫様の人柄と言うものも理解していた。そこから予測される彼女の行動も予測の範疇。
「姫様が千里にもう一度会いたいとでもおっしゃいましたか?」
「えっ……!?」
驚きで目を見開く千里。
「いや、普通に考えておかしくない?誘拐犯に会いたいとか。」
「姫様は姫であるにも関わらずこんな下餞な人達とも関わる。まぁ変人なんだろ。」
敵じゃなきゃ嫌いじゃないんだけどな。
そう付け加えてそうだろ?とでも言いたげな表情を銀時に再度向けた。
銀時は彼の自身ありげな態度に少々苛立ちを感じながらも頷く。
今度驚くのは桂だった。
「そんなことできるわけないだろう。」
「仕方ねーだろ、依頼を受けなきゃ俺らの首も飛ぶ。」
肩を竦めて銀時は返答する。
「会いにいくとかわざわざ捕まえてくださいっていってるようなものじゃなくて?」
両手をヒラヒラとさせ、呆れたように眉を下げる千里。
それに、と神楽を視線を促しながら言った。
「こんな風に殺そうとする輩だってくるんじゃない?」
神楽の顔にまた深くシワが刻まれる。
出会ったことのない怒りに困惑を感じる暇もなく、熱されたマグマのように止まることをしらない。
「お前……そよちゃんを拐って楽しかったアルか?」
神楽は低く、恨みに満ちた声で言葉を紡ぐ。
「人を殺して楽しかったアルか?」
「神楽。」
銀時が制止の声をかけるが神楽は止まらない。
「友達斬って楽しかったアルか!?」