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儚さゆえの愛しさで【銀魂】

第9章 雨ときどき雹



千里side

千里はさらに続ける。

「それともなぁに?近藤さんが止めてくれっていったの?そう言う依頼?」

神楽の顔が赤く染まる。
年頃の可愛さは微塵もなく、睨み付けるような視線が千里を貫いた。

しかし千里は顔色を変えることなく、銀時を見詰めたまま言葉を続けた。

「私達と敵対することを選んだ貴方がどうしてここに来たの?紛らわしいのは嫌いなのよ。」

目的をはっきりのべてくれる?

凍てつく瞳を銀時に向ける。

桂と千里が水と火なら、この二人は水と油という表現が正しい。

「誰の命令でもねぇよ。依頼で来たんだ。」

「依頼?それは都合の言い言葉ね。それは誰からなの?近藤さん?土方さん?それとも……総吾?生きてればの噺だけど。」

口許には手を当て、クスクスと笑う千里。しかしそこには苛立ちと不満を滲ませていた。

銀時は顔をしかめ、唇を結ぶ。
言葉に迷いを覚えている様で、躊躇っている様子だった。

対してその言葉に噛みついたものが一人。

「黙って聞いてればっ……!」

「神楽ちゃん!」

喉笛に噛みつくように拳を振り上げんと立ち上がった神楽。
新八が右手を掴んだことですぐに行動には移せなかったが、彼女の力で意図も簡単に振り払われた。

小さいとはいえ夜兎族。
宇宙最強種族夜兎のいわば卵だ。

千里は軽く舌打ちをしたのち、防御の体制をとった。
刀を抜いても良かっただろうが、面倒くさい。

少し夜兎族に興味だってある。

「おいで、子兎ちゃん。」

紅い唇に余裕の笑みを浮かべながら、手招きすれば、神楽の顔がまた憤怒の表情になる。

「後悔しても知らないアル!」

トンっ、と軽やかな音をたてて飛び上がる神楽。小さい体に捻りを加え、加速して落ちる。

ドガァァァンッッッッ!!!

大きな音がその場になり響き、床に小さいながらも穴が開いた。
勿論そこには誰もいない。

「……っ!?」

手応えがないことに焦った神楽は慌てて後ろを振り返った。
予想道理、彼女の姿を神楽が捉える。

「隙アリっ!」

楽しそうな千里の声が響く。
真っ黒なしなやかな髪を靡かせながら蹴りを叩き込む姿は銀時の目を引いた。

「ぐっ……!」

千里の蹴りによって三メートルほど神楽は飛ばされる。

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