第9章 雨ときどき雹
千里side
あれから五人は同じ畳の部屋に通された。
神楽の荒々しい殺気が空気を濁していく。
あぁ……やりずらい。
心の中で深いため息をつき、ここの当主様の訪れを待った。
その時はすぐに訪れた。
「宗っ!千里!!!」
血相を変えて飛び込んでくる桂。
その様子から心配してくれた様子が伺えた。
宗にはあとから聞いたが一切後の詳細を話していなかったそうだ。
だからか、桂はまず二人が生きていたことに安堵した。
「悪いな、いきなり来て。」
宗が若干そんな桂に引きながらも笑いながら言葉を返す。
そんなことを心から一ミリたりとも思っていなさそうであったが、桂も何となく宗のペースというものに慣れてきたのか、ひとつ頷いた。
「千里も無事でよかった。」
目覚めなかったらどうしようかと。
桂はそう付け加えて、宗とは違い優しい笑みをこちらに向けてくる。
顔の造形は悪くないため、普通に見れば絵になるものだった。
しかし千里は、「どうも。」と、社交辞令ような一言をつっけんどんに返す。
はたから見ればそれなりの温度差だ。
例えるならば火と水のようなものだろう。
しかしそれでも桂は気にしない。
彼らの興味が自分に向いていない理由が分かっているからだ。
ふぅ、とため息をつき、桂はゆっくりとその人物達に視線を写した。
「さて……銀時。何しに来た?」
警戒を含みつつ、それでも旧友が相手だと言うこともあってか優しく問う。
銀時は桂を一瞥し、からかうような口調で言葉を紡いだ。
「何だ、知り合いに挨拶しに来るのに理由がいるのか?」
「少なくとも普通の知り合いならな。でも銀時……貴様は普通の知り合いではない。」
「オイオイ、ずいぶん冷たいじゃねぇか。」
肩をわざとらしく落とす銀時。
全くもって悲しくはなさそうだ。
桂も警戒を解く気はさらさらない。
双方の思惑が絡み合っていく。
そして結局折れたのは銀時だった。
「……この前の赤根崎家の一件はお前らだよな?」
問う口調ではなく、確認するような言い振り。その一言から真選組からなにか言われたのは明白だった。
三人が手を組み、行動に移したと言うことを。
「内情でも探れって土方さんにでも言われた?」
あしらうように千里は笑う。