第9章 雨ときどき雹
千里side
背筋に強烈な寒気がはしった。
本能で感じたのは勝てないと言う事実。
「っ……!!!」
沖田の寒気とは違う。
電流のように激しく、痺れさせるような寒気。
これが、伝説……。
「その様子見るとテメェらもヅラに会いに来たんだろ?だったら案内しろよ、俺一応アイツの知り合いだぜ?」
紅い瞳をすっと細める銀時。
何も見通すことのできない妖しい瞳がそれぞれの意思を鈍くする。
どうする……?
ちらりと宗を盗み見れば厳しい表情を露にしていた。戦いには不向きな場所。騒ぎを起こしたくない考え。それらを統括的に見て迷っているのだろう。
対して彼らにはここで戦ったとしてもデメリットはない。襲われたから刀を抜いた、で正当防衛が通る。
攘夷浪士を悪と考えるこの世界なら、ましてや二人も大罪人がいるなか、あちらの主張が通ってしまう。
「桂は今どこに?」
そうして宗が出した答えは大人しく彼らの申し出を受けること。
宗は桂の部下達に言葉を放った。
勿論彼がここの組織を潰しに来たわけではないと言うことを賭けてだが。
「か、桂さんなら……中に……。」
「この人が来ていることを桂には言ったのか?」
いえ……ともごもごと口を動かし答える部下達。独自の判断で知らせなかったようだ。
「この男が桂の知り合いと言うのは本当だ、確かに貴様らが危惧することも分かるが、とりあえず話してこい。」
「は、はい。」
肩を竦めながら部下が返事をした。
心のなかでは正直ほっとしているところがあるはずだ。
「あァそれと。」
宗は一言付け加えた。
「宗と千里も来たことを知らせてくれ。」
銀時にも負けない怪しげな笑みを浮かべながら。