第9章 雨ときどき雹
千里side
笠を深くかぶり、もうすでに雨の余韻が消えた道を二人は通った。
もうすでに大罪を犯し、両方の顔が割れたので離れて歩く必要はない。
何時の奇襲にも対応できるよう、視線を張り巡らせながら歩を進めていく。
「そんなに肩を張るな。余計怪しい。」
「……わかってるよ……。」
他愛のない会話を交わしながら、目的地を目指す。
すると、微かに言い争う声が聞こえた。
「なんだ?桂の潜伏先の前だぞ。」
「警察?」
「いや……違……」
そこで宗の言葉が途切れた。
少しだけ驚いたような表情を浮かべている。
「どうしたのそ」
「だぁかぁらぁヅラに会わせろっつってんだろ!!!!」
その時聞き覚えのある声が響いた。
びっくりして覗けば、やはり思い浮かべた人物がいて。
風にさらさらと揺れる綺麗な銀髪。
「坂田銀時っ……!」
その声が届いてしまったのか、彼は素早く振り返った。
深紅の目と目があって肩が自然にはねる。
宗は素早く刀に手をかけた。
傍にいた神楽とも目が合い、その瞳に怒りが浮かんだのが確認できる。
まさか、私たちが目的?
一秒遅れて刀に手をかければ、にらみ合いが続いた。
神楽の瞳と新八の瞳が容赦なく千里を射ぬいていて。
これは斬り合いになるか?
そう瞬時に感じたとき_______。
思わぬ人物が待ったをかけた。
「久しぶりだな、千里チャン……だったか?」
間延びしたような、それでいて絶対的な何かを感じさせる声がその場を支配した。
彼の口許には笑みが浮かんでおり、爪を隠した鷹のように飄々としている。
「……何の用?」
掠れる声を振り絞って言葉を紡げば、彼はまたニヒルに笑った。
銀髪は儚げであるのに瞳は狩人そのもの。
「お前たちに用はあるけど、そりゃヅラに会った後だ。その後に用件は話すぜ、あァ違ェな。依頼、だな。」
「さっさと話せ、でなければ斬る……っ!」
意味のわからない言葉に苛立ちを覚えた千里は焦りに任せて刀を少し出した。
近くにいた宗も同様に。
勿論あちらにいた二人の子供たちも体制を変えた。
__________しかし依然として彼はその表情を変えない。
そして言い放つ。
「斬れるもんなら斬ってみろ。仮にも俺ァ……
伝説の攘夷志士、白夜叉だぞ?」