第8章 教えてくれたのは君だった。
桂side
はめられた、と気が付いたのは彼らが侵入して大分たった後だった。
微かに通信機から聞こえてくる会話に耳を澄ませ、外で構えていた真選組の隊員を斬っていく。
その間にも目まぐるしく状況が変わっていっていたのは桂も通信機越しに理解していた。
気が気ではなかった。
もしこれで彼らが死んでしまえば自分が殺したのも同じ。
桂は手段を選ばず、彼等の救出を優先した。
部下達も自分達の不手際に冷や汗を流しており、その桂の行為を止めるものはいなかった。
そしてなんとか救出した時、目を疑うような光景が広がっていた。
血まみれで膝をつく沖田。
髪の色を変えた宗。
立ち尽くしたまま、動くことができない真選組。
そして人々の視線を集める女______……。
華奢な体を宗に預けきり、目を閉じている千里。
その肌には幾つもの涙の後が残っていた。
「すまぬ。」
彼らを救出し終えた後、桂はすぐさま宗に頭を下げた。
今は近くの小さな森の中に身を潜めている。
雨は次第に小雨になり、今ではほぼ降っていない。
空に散らばった幾つもの星が彼らを照らす。
「俺らの間違った情報のせいで貴様たちを危険な目に合わせてしまった。」
背中を向け、胸に千里を横抱きにしたままどこか遠くの空を見ている宗。
彼の髪は既に黒色に戻っていたため、闇にとけており、風によって切な気に揺れる。
背中から溢れるモノは哀しみに溢れたものだった。その姿は桂の心をぎゅうと締め付ける。
「本当にすま」
「もういい。」
桂が今一度謝ろうとしたのを宗は遮った。
彼の顔は見えないが、震えているのがわかった。泣いているわけではなく、悔しさに震えているようで。
「俺が、悪いんだ。」
掠れに掠れた声。
悔しさも哀しさも全てをひっくるめた声。
その言葉はよく二人のことを知らない桂にも深く深く突き刺さった。
「また……っ……守れないっ…、なんでいつも、上手にっ……。」
宗の手に力が入る。
千里の華奢な肩を、足を、引き寄せた。
彼女の頭を自分の胸に押し付け、彼女の温もりを感じようとする。